【介護離職を防ぐ】仕事と介護の両立を成功させる5つの戦略

「介護離職」は、キャリアの中断や経済的な基盤の崩壊を招く、大きなリスクです。特に介護が長期化すると、収入が途絶え、自身の老後資金まで危険にさらされてしまいます。仕事を辞めてしまうと、親の介護費用を賄うことが困難になり、結果的に親の生活の質も低下するという負の連鎖に陥りかねません。

仕事を辞める前にできることは、必ずあります。

本記事では、仕事を辞めずに親の介護を継続するための**「仕事介護両立」を成功させる5つの戦略を解説します。「介護休暇制度」**の賢い使い方、職場や家族との協力体制の作り方など、人的負担を軽減し、ご自身の生活基盤を守るための実務的なテクニックを紹介します

仕事と介護の境界線を引く：情報開示と勤務調整

介護と仕事を両立させるための第一歩は、**職場を「敵」ではなく「味方」**につけることです。問題を一人で抱え込まず、早い段階で職場との関係を整備し、両立が可能な環境を整えましょう。

職場への「情報開示」は早めに、具体的に

親の介護が始まった、あるいは近いうちに必要になりそうだと感じたら、すぐに職場に伝える準備をしましょう。

・信頼できる上司への相談：親の現状（要介護度、病名、進行度）を、まずは信頼できる直属の上司や人事部門に早めに伝えておくことが重要です。

・予測と提案：感情論ではなく、「〇月から週に1回通院の付き添いが必要になる」「要介護認定が下りるまでの2ヶ月間は、週に2回午前休を取りたい」など、いつ、どれくらいの期間、どのような業務調整が必要になりそうかを具体的に予測して提示します。これにより、会社側も対策を取りやすくなります。

国の制度と会社の柔軟な勤務制度の活用

法律で定められた制度や、会社独自の制度を最大限に活用し、時間を確保します。

・柔軟な働き方の申請：時差出勤、短時間勤務、テレワークなど、会社が提供する柔軟な働き方制度のリストアップと申請方法を確認しましょう。特にテレワークは、移動時間を削減し、緊急時の対応もしやすくなるため、有効です。

・「コアタイムなし」のフレックスタイム制：もし利用可能であれば、**「コアタイムなし」**のフレックスタイム制は、突発的な介護対応や病院への付き添い後に時間調整がしやすくなるため、介護者にとって非常に役立ちます。

制度を最大限に活用する：「介護休暇・休業」の賢い使い方

仕事と介護の両立を支援するために、国が定めている制度を戦略的に利用し、一時的な休息や体制再構築のための時間を確保しましょう。

「介護休暇」と「介護休業」の違いを理解する

制度名	取得可能日数	取得方法	給付金	主な使いどころ
介護休暇	年5日（2人以上で年10日）	時間単位でも取得可	なし（有給は会社による）	親の通院の付き添い、緊急時の呼び出し、介護サービス事業者との面談など、ピンポイントの対応。
介護休業	対象家族1人につき通算93日まで	3回まで分割取得可	あり（賃金の約67%）	介護の初期段階、施設入居後の慣らし期間、家族会議など、集中的な体制構築。

介護休業の「戦略的な使いどころ」

介護休業は93日と期間が限られています。無計画に使い切ると、本当に困ったときに利用できなくなります。

・体制再構築の時期に集中：休業期間は、最も体力や時間が必要な**「要介護認定の申請期間中」や、「親が施設入居・退院した直後の環境変化に慣れる期間」**など、集中的な体制構築が必要な時期に充てるべきです。

・休業中の給付金：雇用保険から**「介護休業給付金」として、休業前の賃金の約67%**が支給されます（上限あり）。この経済的サポートを活用することで、収入が途絶えるリスクを軽減できます。

介護保険サービスを「最大量」利用する

介護の負担は、個人の努力で何とかなるレベルをはるかに超えています。個人の負担を減らし、プロに任せる部分を増やすための戦略が不可欠です。

（1）ショートステイの「連続利用」を前提にケアプランを組む

・レスパイトケア（介護者の休息）：ショートステイ（短期入所）は、親の介護だけでなく、**家族が心身を休めること（レスパイトケア）**を目的として利用できます。

・定期利用の確保：在宅介護の負担を軽減するため、月1回や隔週など、定期的にショートステイをスケジュールに組み込むことを前提にケアマネジャーとプランを組みましょう。施設が予約で埋まりがちなので、早めの調整が必要です。

・利用上限の確認：介護保険では利用日数に制限がありますが、自費サービスも組み合わせることで、家族の休息時間を最大限に確保できます。

（2）ケアマネジャーとの連携強化

・明確な要求：ケアマネジャーに**「私は仕事を辞めるつもりはないこと」「離職は避けたいこと」を明確に伝え、現在の要介護度で許される最大限のサービス量**を組み込むよう依頼することが重要です。

・サービス内容の調整：朝の忙しい時間に訪問介護（身体介護）を入れ、家族が余裕をもって出勤できるようにするなど、仕事のスケジュールに合わせたサービス配置を調整してもらいましょう。

家族・親族との「協力体制」を構築する

介護負担を一人で抱え込むことは、燃え尽き症候群や介護離職に直結します。親族間での不公平感を解消し、持続可能な体制を築きましょう。

「親族会議」の開催と役割の可視化

・会議の定期化：兄弟姉妹など親族を集めた会議を、できれば介護が始まる前や初期段階に開催し、介護分担の必要性を共有します。

・役割の分担：介護分担は、身体介護の有無だけでなく、「できること」で分担します。

・時間負担：「週末の介護」「通院の付き添い」

・専門性：「金銭管理」「行政手続きの担当」

・情報の窓口：「ケアマネジャーとの連絡窓口」

・記録の共有：会議で決まった内容や、介護の記録、費用などは、家族全員がアクセスできるクラウドツールなどで可視化・共有し、不公平感や疑念が生じないように努めます。

「時間」と「お金」のバランスを取る交渉術

・介護に物理的に時間を使えない遠方居住者や多忙な親族には、**費用負担（金銭的サポート）**をお願いするなど、負担の形を多様化して公平性を確保するための交渉を行いましょう。

・金銭の明確化：金銭サポートについても「毎月〇万円を介護費用として拠出する」など、曖昧さを避けて明確なルールを取り決めることが、後のトラブルを防ぎます。

最終手段の検討：施設入居を「前倒し」で選択する

仕事を辞めてしまう前に、在宅での両立が限界に近づいたときの、最後のセーフティネットとしての施設入居を検討する勇気を持ちましょう。

施設入居のタイミングを見極める

・限界サインの認識：以下のサインが見られたら、在宅介護は限界に近づいています。

　介護者自身の健康不安：不眠、体重の激しい増減、体調不良。

　仕事への影響：仕事のミスが増える、遅刻・早退が増え、職場での評価が下がる。

　家族間の不和：配偶者や子供との喧嘩が増える。

情報収集の継続：「特養」の空き待ちだけでなく、「有料老人ホーム」「サ高住」「グループホーム」など多様な選択肢の費用や入居基準を常に情報収集しておきましょう。

入居が早まることのメリット

施設入居を前倒しで選択することには、多くのメリットがあります。

・親の適応：親がまだ体力のあるうちに施設に慣れてもらいやすくなります。認知症が進行してからでは、新しい環境への適応が困難になるケースが多いです。

・家族の安定：介護者が精神的に安定し、仕事と生活を再建できます。介護者が安定することで、親を訪問する際にも優しく接することができ、長期的なサポート体制を維持できます。

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