【最後のセーフティネット】「市町村申立」による成年後見制度の仕組みと対象者

介護関連

成年後見制度とは

認知症や知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分になった方を保護するための成年後見制度は、原則として本人や親族が家庭裁判所に申立てを行います。

しかし、近年身寄りがない単身高齢者の増加、あるいは家族・親族がいても経済的な理由や介護負担、親族間の対立により申立てが期待できないケースが急増しています。

このような場合、本人の権利や財産が侵害されるのを防ぐため、地方自治体(市町村長)が申立てを行うのが「市町村申立」による成年後見制度です。これは、本人の福祉を最優先するための最後の
セーフティネットとして機能します。

本記事では、市町村申立の対象となる具体的なケースや、市町村長が申立てを行う際の仕組み、
そして手続きの流れについて詳細に解説します。

市町村申立とは:家族が動けない場合の公的な保護

成年後見制度の申立ては、民法第7条で定められた親族(配偶者、四親等内の親族など)が行うのが一般的です。しかし、これが機能しない場合に、市町村長に申立権が認められています。

市町村長申立の根拠と目的

市町村申立は、老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健福祉法に基づき、各福祉法に定められた「措置権者」としての市町村長が行うものです。

目的
本人の権利擁護と福祉の向上を目的とし、特に財産を管理したり、医療・介護サービスの契約を結んだりする人がいないために、本人の生活が危険にさらされている状況を回避するために行われます。

対象となる具体的なケース

市町村申立の対象は、主に以下の3つのパターンに分類されます。これらは地域包括支援センター民生委員などの情報提供により表面化することが多いです。

①身寄りのないケース(最も多い)

単身者で親族がいない、あるいは親族がいても連絡が取れない、所在不明である

・親族が遠方に住んでいる、高齢であるなど、物理的・身体的に申立てが困難である

②親族が協力しない・対立するケース

・親族が財産管理への関心が薄く申立てを拒否している(ネグレクト)

・親族間で遺産や財産の管理を巡って激しく対立しており、誰も申立てを行えない

③財産の使い込み・虐待の疑いがあるケース

親族による財産の使い込み(経済的虐待)や身体的虐待が疑われるため、親族による申立てが適切ではない、または申立てをしない状況にある。

申立前の福祉的アプローチ

市町村がすぐに申立てを行うわけではありません。まず、地域包括支援センターなどが関与し、親族に対して申立てを促したり、福祉サービス(訪問介護・通所介護など)の導入を試みたりするなど、福祉的なアプローチを優先します。それでも解決しない場合に、最終手段として市町村申立に移行します。

市町村申立の手続きの流れと特徴

市町村長が申立てを行う際の手続きの流れは、一般の親族申立と大きく変わりませんが、申立に至るまでの背景や、費用負担の仕組みに独自の特徴があります。

申立て前の調査と準備

市町村の担当部署(高齢福祉課など)と地域包括支援センターが連携して、以下の流れで手続きを行います。

・現状の把握:本人の財産状況、生活環境、医療・介護サービスの利用状況を詳細に調査します。

・申立人の特定:本人の戸籍や住民票を確認し、他に申立てを行うべき親族がいないか、いる場合はその意向を最終確認します。

・医師の診断:家庭裁判所へ提出する医師の診断書を作成してもらい、本人の判断能力の程度を明確にします。

家庭裁判所への申立て

市町村長名義で、家庭裁判所へ申立書を提出します。

・後見人候補者の推薦:市町村申立の場合、親族による財産管理にリスクがあるケースが多いため、弁護士や司法書士、社会福祉士といった専門職社会福祉協議会を後見人候補者として推薦することが一般的です。

・鑑定の実施:申立後に家庭裁判所の判断で、本人の精神状態を詳しく調べる鑑定が実施される場合があります。

市町村申立の最大のメリット:後見人の選任

市町村申立の最大のメリットは、親族が関与できない状況で、家庭裁判所が必ず後見人を選任し、
本人の権利が守られる
ことです。選任された後見人は、財産管理、福祉サービスや入院の契約、行政手続きなどを代理して行います。

費用負担の仕組み:「市町村長 申立て 費用」の公費負担

成年後見制度の申立てには、収入印紙代や郵便切手代などの申立費用と、選任された後見人に支払う「後見人報酬」が発生します。これらの費用負担が、申立てをためらう大きな要因の一つです。

申立費用の負担(公費負担)

市町村長が申立てを行う場合、申立てにかかる費用は原則として市町村が公費で負担します。

・対象となる費用:申立に必要な収入印紙代、郵便切手代、戸籍謄本などの取得費用、そして鑑定費用などが含まれます。

・公費負担の仕組み:市町村は、これらの費用を一時的に立て替えます。その後、本人の財産から費用を回収できる見込みがある場合は回収しますが、本人の財産が乏しい場合(生活保護受給者など)は、回収を免除し、最終的に市町村が負担します。

後見人報酬の負担(助成制度)

申立て後にかかる費用となる後見人報酬についても、市町村は負担軽減の仕組みを設けています。

報酬助成制度
多くの自治体では、本人の収入や資産が一定額以下の場合(生活保護水準など)に、後見人へ支払うべき報酬の一部または全額を市町村が助成する制度(成年後見制度利用支援事業)を設けています。

市町村申立によって選任される後見人とその役割

後見人選任の原則

家庭裁判所は、市町村長が推薦した候補者(専門職)だけでなく、本人の利益を最優先して最適な人物を選任します。市町村申立では、親族との利害関係がない第三者が選ばれるケースがほぼ全てです。

選任される人
弁護士、司法書士、社会福祉士※などの専門職、あるいは社会福祉協議会などの法人後見人

※認知症の高齢者や障害者が不当な契約をさせられたり、虐待を受けていたりする場合に、成年後見制度の利用を促すなど、法的な保護も含めてサポートします。

第三者後見人の役割とメリット

第三者後見人は、公正中立な立場で本人の財産と権利を保護します。

・財産管理:本人の銀行口座の管理、年金等の受領、医療費・介護費の支払いなどを行います。
・身上監護:介護サービス契約、施設入居契約、医療同意(延命措置の同意権は除く)など、本人の生活と健康に関する契約を行います。
・安心感親族間の対立や不正な財産利用のリスクがなくなり、本人の生活が安定するという、最大のメリットがあります。

公式LINEでの無料相談サービスの案内

ハートでは老人ホーム紹介会社として高齢者住まいアドバイザー、ファイナンシャルプランナー、不動産終活士が在籍しており完全無料で適切な介護施設をお探ししご提案しております。詳しく知りたい方、どの施設が最適かわからない方、自分に合ったサービスを探している方は、ハートの公式LINEからご相談ください。資格を持つ専門のスタッフが、あなたのニーズに合った情報を提供します。

こちらから公式LINEに登録して、相談ください!よくある質問(Q&A)

ご希望に合った施設を探すのはこちらから

まとめ:孤立させないための公的な支援

市町村申立による成年後見制度は、「身寄りがない」「家族に頼れない」といった理由で孤立し、権利が侵害されるリスクのある方々を保護するための最後のセーフティネットです。

地域包括支援センターや民生委員、福祉事務所などが情報をキャッチし、市町村長が申立てを行うことで、費用の心配なく専門職の後見人が選任され、その後の生活が公的にサポートされます。

この制度は、高齢化が進む現代社会において、誰も孤立させないための自治体の重要な責務です。
気になる方が周囲にいる場合は、まずはお近くの地域包括支援センターにご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました