はじめに
親の自宅(不動産)の承継は単なる税金の問題ではなく、親の介護費用や住環境、そして将来の家族間のトラブルにまで影響を及ぼす、非常に重要なライフイベントです。特に、在宅介護や施設入居を見据えている場合、承継方法の選択を間違えると、莫大な税金や費用負担が発生するリスクがあります。
介護者が知っておくべきは、実家を承継する際に税金が大幅に軽減される特例制度の存在です。
本記事では、生前贈与と相続の比較を行い、介護者が特に活用すべき「小規模宅地等の特例 」の適用要件や、「相続時精算課税制度」のメリット・デメリットを解説します。税制優遇を最大限に活用し、親の介護と家族の将来を守るための戦略を立てましょう。

不動産承継の基本比較:生前贈与と相続
不動産を次の世代に引き継ぐ方法は、大きく分けて「生前贈与」と「相続」の2種類です。それぞれの基本的な特徴と、税制面での比較を理解することが出発点となります。
生前贈与のメリット・デメリット
メリット
・親の意思で確実に承継先を決められる。
・暦年贈与(年間110万円まで非課税)を利用した長期的な対策が可能。
・相続時の争いを避けやすい。
・贈与税は相続税よりも税率が高く、税負担が重くなることが多い・不動産取得税や登録免許税といったコストが別途発生する・小規模宅地等の特例が使えなくなるリスクがある
相続のメリット・デメリット
・相続税には基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があり非課税となるケースが多い
・小規模宅地等の特例が活用できれば、税負担が劇的に軽減される
・遺産分割協議が必要であり、兄弟姉妹間で揉めるリスクがある
・税制が将来的に改正されるリスクがある
・特例の適用要件が複雑で、手続きに専門知識が必要
日本の税制では、一般的に相続を選択し、後述の特例を適用する方が、税負担が軽くなるケースが多いです。
介護者を強力に支援する特例:「小規模宅地等の特例」徹底解説
在宅介護をしていた場合、あるいは親が施設に入居した後であっても、この特例が適用されれば、実家を相続する際の税負担が劇的に軽減されます。

特例の概要と節税効果
小規模宅地等の特例とは、被相続人(亡くなった人)が住んでいた宅地(土地)について、一定の要件を満たした場合、評価額を大幅に減額できる制度です。
・節税効果:宅地面積約100坪までの部分について、評価額が80%減額されます
(特定居住用宅地等)。
・例:評価額5,000万円の土地の場合、4,000万円が非課税となり、相続税の計算対象は1,000万円となります。
「特定居住用宅地等」の要件
この特例を受けるには、実家を承継する相続人が以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
・同居していた相続人:被相続人と同居し、相続開始後もその自宅に居住し続ける相続人
・別居していた相続人(家なき子特例):被相続人と別居していたが、以下の要件を満たす相続人(いわゆる「家なき子特例」)
・相続開始前3年間、自分や配偶者の持ち家に住んでいないこと
・相続開始時に自身が居住している持ち家を所有していないこと
・相続開始後も、その自宅を相続税の申告期限まで保有し続けること
「親の介護」と「適用要件」の具体的な関係
介護と特例の適用で最も問題となるのが、「親が施設に入居した場合」です。
・親が施設に入居後、自宅が賃貸などの用途に供されていないこと(空き家のままになっていること)
生前贈与の選択肢:「相続時精算課税制度」の活用
生前贈与の選択肢として、まとまった財産を一度に非課税で贈与できる制度があります。

制度の概要
・非課税枠:生涯を通じて2,500万円まで贈与税が非課税となります。
・精算の仕組み:贈与された財産は、贈与者の相続時に相続財産に合算され、相続税が課税されます。既に支払った贈与税(2,500万円を超えた部分にかかる一律20%の税率で支払った分)は、相続税から控除されます。
不動産で使う際のメリット・デメリット
・贈与時の評価額で固定できるため、将来値上がりしそうな不動産を贈与するのに有効
・早期に承継先を確定できる
・小規模宅地等の特例が使えなくなるリスクが大きい。
・不動産取得税や登録免許税などのコストは別途かかる。
・一度この制度を選ぶと、暦年贈与(年間110万円非課税)には戻せない。




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